情熱の継続

サンフレッチェ情熱史

天皇杯準決勝は、サンフレッシュ広島が延長後のPK戦を制し、決勝進出を決めました。
勝戦は元日、横浜F・マルノスと戦います。

サンフレッチェ広島が、奇跡の逆転優勝でJ1連覇を果たし、地元広島ではテレビの特番などに監督や選手が次々出演。雑誌も特集号や優勝グラフが発売されました。

そんな中で、発売された『サンフレッチェ情熱史』も、優勝がもたらした出版企画だと推察できます。
サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』編集長、中野和也氏によるクラブ20年史。帯に「広島の過去と現在を知り尽くした中野さんならではの力作」と、森保一監督がコメントしているとおり、その充実ぶりは圧巻です。

昨シーズン優勝したものの、今シーズン前の大方の予想は「連覇はなし」でした。にもかかわらず奇跡ともいえる連覇を成し遂げたのだから、はっきりいって私自身も大いに浮かれていました。
そして、それは本書を手に取った時も同じでした。

しかし・・・。
しかし、本書に綴られているサンフレッチェ広島の歩んできた道は想像を超えるものでした。そこには、胸が締めつけられ、息がつまるような壮絶な道のりが描かれていました。
坂道を転げ落ちるかのように観客は遠ざかり、赤字が膨らむ経営の現実。選手の年棒削減を掲げ、「選手を育てて別チームに売り、移籍金収入を得るのも現実的な道」という考えさえも・・・。

降格や経営危機を乗り越えられたのは、弱小、貧乏球団・広島カープを支えてきた地域性のおかげに違いありません。クラブやサポーターだけでなく、地元が我慢強く歩んできたからこそ、今まで歩んで来られたし、ここまでたどり着いたのだと思います。

とにかく、これを読んだ私は、まるで冷や水を頭からかけられたような気分になりました。

お手軽で内容の薄い出版物が多い中で、341ページ量、質ともに充実した内容。サンフレッチェ広島のファンやサポーターだけに読ませるのはもったいない一冊でした。

今年二つ目の栄冠まであと一勝。元日には、20年分の熱い応援を捧げ、勝利の美酒に酔いしれたいと思います。

本・コミック: サンフレッチェ情熱史/中野和也:オンライン書店Honya Club com